断熱,気密、そして湿度・9

今日は、気密工事を行うときに最も重要な事である『気密ライン』の事をお伝えしたいと思います。

外張り断熱の家が住宅の構造躯体の外側に、空気を通さない厚くて板状になった断熱材を張り、その断熱材の外部側で気密を取るように、住宅の気密を取るところは室内側から一番外部側で施工しなければなりません。夏は暑く冬は冷たい外気は断熱材の外部側で遮断しなければ気密の目的が果たせないから…と言うのが理由です。

冬の寒い日に外出する時に一番最後に着るのは冷たい北風を遮断してくれる『ジャンバー』や「コート』であると思います。冬に衣類を着る順序は、まず『肌着』、次に『シャツ』、その次に『セーター』、最後に『ジャンバー』です。間違っても一番初めに『ジャンバー』を身につける人はいないはずです。冬でも多少暖かい日は『ジャンバー』なしでも外出できますが、零下40度~50度という地にいる事を想像してみて下さい。肌から一番外側で極寒の地の冷気を遮断しなければとても外出することなど出来ません。外出できないと言うよりも、命が危険にさらされる事になると思います。

住宅で気密を取る所は、何度も言いますが屋根は、瓦などの屋根材の下に張る『野地合板』(野地板では気密は取れません)で、壁 は『構造用耐力面材』です。基礎は、床下空間を外気とみなす場合は,床下をポリスチレンフォーム等の『床断熱材』で断熱と気密を取り、床下空間を屋内空間とみなす場合は『基礎の外部』、いわゆる『基礎の外断熱』で気密と断熱を取ります。

間違っても内装仕上げをする『石膏ボード』を張る直前の外壁や天井の下地材に『ビニールシート』を張ることで気密を取ってはなりません。湿気も空気も通さない『ビニール』を外壁に面した室内側の仕上げ材の外側に張ることは、人が着る衣類の順番で言えば,なんか想像しただけでも気持ちが悪くなりそうですが、肌着の次にビニールで作られた『シャツ』を着るようなものです。

しかし、この『愚か』ともいえる施工を何も考えずにいわれるがままに,施工要領に従って施工している住宅会社は沢山あると思います。4~5年前の事ですが、県内で『高気密・高断熱』を売り物にしている地元の大手住宅メーカーで新築を建てられたばかりと言うお客様から『自分の家を建ててもらった住宅会社の選択を間違っていたような気がしてならないので相談に乗ってもらえないか…』というご連絡を受けて訪問させていただいたことがあります。

相談の内容は、天井や外壁に面したボード下に張られたビニールを全て剥がして,湿気を吸ったり吐いたりしてくれる『セルロースファイバー』を吹き込んでもらいたいと言うことでした。坪当たり100万円近い金額の平屋の家でした。その時に天井裏を確認させて頂いて愕然とした事が、『外の明かりがいたる所から差し込む屋根裏で,二重に断熱材を敷くと言う本当の意味も理解せずに無造作に二重にに敷かれた、分厚いグラスウールが目に入った』という事です。

天井にグラスウール等の断熱材を二重に敷く理由は、袋状に造られた断熱材を電気の配線などが張り巡らされている天井で、丁寧にまず一重目を敷き、一重目の断熱材を『横』に敷いたならば二重目の断熱材は『縦』に敷き、さらに一重目の断熱材と二重目の断熱材の継ぎ目をなくすように『縦と横』をずらして重ねて敷くことで『断熱欠損』が起こりやすい袋状になったグラスウール等の断熱施工の欠点を少しでも少なくするためです。

確認させていただいたお客様のご自宅の天井断熱の施工状況は、かなり厚いグラスウールだったと思いますが、一重目と二重目の断熱材が『縦も横も位置』も全く同じように敷かれており、天井裏の電気配線によってめくれた断熱材は一重目、二重目が同じ状態でめくれ、天井の気密のために天井下地に張られた黄色いビニールシートと石膏ボードの裏地が良く見えました。

この事は何を意味するのか…?。『外の明かりが入る』と言う屋根裏は、外の気温と同じになります。いわゆる天井裏が『外気温』であるという事です。グラスウールがめくれて敷かれ、天井ボードの裏が見えると言う事は、天井の12、5ミリの石膏ボードの裏が外気温に接していると言う事と二重に敷かれた分厚い断熱材がまるで役に立っていないという事になります。

凍てつく冬の寒い日、外気温が零度になった時,部屋内の温度を20度に設定したとすれば、石膏ボード1枚で『20度』の温度差が出来てしまう事になります。ボード1枚で20度の温度差を防ぐことは困難で、当然の事ながら室内の温度を下げる原因になります。天井ボード裏での結露は、屋根裏が『隙間だらけの状態』ですので発生する事はないでしょう。このお客様宅で最も心配しなければならない所は、壁内も同じレベルで施工していれば、その壁内は『悲惨』な状況になると予想される所です。

県内大手であり、住宅展示場もあります。しかもその会社がお客様にお渡しするカタログにはやたら立派な『高気密と高断熱の数値』が並べられています。そのカタログを見,営業マンから説明を受けたお客様がその内容を信じて契約してしまうのはやむを得ない事だと思います。でも、一番かわいそうなのは、内容も分からずにその会社を信じて家を建てられるお客様なのです。

このような事は、どうすれば防げるのか…、誠に残念なことですが、お客様が事前にしっかりと勉強される他には手がありません。以前にも書きましたが『プロだから、任せておけば大丈夫…』は失敗の元であるという事をしっかりと頭の中に叩き込んでおいてください。

今日は、とても長くなりました。次は『湿度』についてお知らせしたいと思います。

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