本当に2025年に日本の住宅の断熱性能は激変するのか?…7

前回の続きです。

相談を受けましたお客様の天井断熱はおそらく屋根裏に上って施工した事と思います。施工マニュアルに『天井裏に上って施工する』とでも記してあるのかもしれません。50度近い屋根裏に上ってみることを想像してみて下さい。とても長時間入っていられるものではありません。

時間を惜しまず、丁寧に根気よく作業する事など到底無理な事なのです。その現場は、そのような状況化で施工したんだろうと思います。職人さんとすれば決められている天井裏に入って施工する事を守る代わりに、実に乱雑にグラスウールが敷きこまれていました。

電気配線や吊り木の所はカットもせず、グラスウールはめくれたままで天井の黄色の気密シートや石膏ボードがいたる所で見えました。天井でビニールの気密シートで気密を取っていますので、屋根裏は、あちこちの軒先から明かりが見え、屋根裏空間は外気温とほぼ同じです。気密は取れていてもビニールハウスと同様に断熱されていない所が随分ある訳です。国土交通省はこの事もUA値である『平均熱貫流率』という意味なのでしょうか?

その現場でさらに目を疑いたくなる現状がありました。『厚い断熱材を2枚重ねに敷く』という本来の意味をその住宅を施工した職人さんや、現場を管理している監督さんが理解していないとしか思いようがないことです。

電気配線などの部分をカットもせずめくれたままの1枚目の断熱材の上に2枚目の断熱材が計ったように全く同じ位置に重ねて敷かれていたのです。本来2枚重ねに断熱材を施工するという意味は、断熱材の厚さを確保するという事と断熱の欠損を防ぐ所にあります。

袋状の完成品の断熱材を断熱欠損なく敷き詰めるには、天井裏に入って断熱材を電線部分などをカットしながら丁寧に敷き詰め、重ねて施工する2枚目の断熱材は、1枚目が縦方向なら、2枚目は横方向に、1枚目の断熱材の縦・横の継ぎ目の真ん中に敷きこまなければなりません。断熱欠損になり易い断熱材の継ぎ目を2枚目の断熱材の継ぎ目をずらして欠損を防ぐ事なのです。

何故この様にやらなければ意味がない断熱の施工が実際の現場で出来ていないのか…?国土交通省のお偉いさんや、基準を定める時にアドバイスをしている著名であっても現場を知らない建築家や建築学者はこの事実を知り、対策をしなければ設定している断熱性能は『絵に描いた餅』となります。

次回は気気密をすべき所や真夏でも屋根裏空間で根気よく仕事ができる施工方法についてお伝えしたいと思います。