『松尾式』『西方式』小屋裏エアコン・床下エアコン設置住宅・16

お客様から頂いたDVD三枚目・第22項目(松尾氏解説)

敷地条件が悪くても日射は取れる!(実例紹介)

第21項目の計算せずに最適なエアコンの容量選定が出来るサイトの使い方…はコメントを省略します。

敷地の南側に十分な空きがなく、何も考えずにそのままプランをしてしまうと全く日射が取れない敷地の場合はどのように設計していくか…という内容でした。ハウスメーカーはなるべく決められた住宅を売ろうとしますので確かに不得手だろうと思います。その敷地にはどのようなプランの住宅を建てるべきか…を真剣に考えない工務店も確かに多く、日射が十分に取れるプランを考えることが無い…という事も間違いではないと思います。

私もそのような敷地のお客様はこれまで2例しかありません。1例目は今から31年前、平成4年にお引き渡しをさせていただいたお客様です。南側の境界は建物からおよそ1メーターでした。そのお客様は、他の工務店とご契約をされていましたが、ご契約をされてからおよそ半年の間打ち合わせが進められないという期間がありました。その間に、弊社が開催した新築住宅の現場見学会にご来場いただいたのです。

お客様のお話をお伺いしますと、あれもできない…これもできない…と依頼する希望を受け止めてくれないし、できないと断られる…という事でした。そのプランがどうだったかはよく覚えていませんが、私がまず考えたのが日射が取れないのでリビングを2階に持って行き、浴室等を1階に設定するというプランです。区画整理の土地で、元々の敷地の面積から減歩されている為、まともな駐車スペースも取れない為、玄関横に2台分のビルトインガレージを造りました。

植物の緑がとてもお好きだとお伺いした時にキッチンの右手に鉢植えの植物が置けるようにベランダを造りましょうか?…とご提案をさせていただいた時の『えっ、そんなのが出来るの…』という奥様のとても嬉しそうなお顔が今もつい先日の様によみがえります。

2例目は、今から10年前にお引き渡しをさせていただいたお客様です。このお客様も新築住宅の完成現場見学会にご来場いただきました。ご来場いただいた時にはすでに建築を依頼する工務店を決められておられ、参考までに見学会に行ったと後からお伺いしました。見学会の会場での私との話の中で何かを感じられたのか、後日弊社にお越しいただく事になりました。

その時に初めて決定したプランを見せていただきました。敷地は、東西に長く、南北が短い、まさに日射が取れない敷地でした。弊社に来られるまでに4社と打ち合わせを行い、同じプランで見積を取られ、その中で依頼する会社を決めておられました。そのプランを確認しますと、敷地の北側に2メートル近い低い土地があり、その低い土地に対し擁壁も造らずにのり面を残したまま建物を配置し、建物から南側の境界まで80㎝もないという状況でした。

南面と言っても敷地が真南に向いている訳ではありません。しかしながら道路方面から取れる南側の日射スペースには『玄関』『階段』が配置されていました。私は、そのプランを見て思わず『このプランをこのまま訂正もせずに4社もの工務店が見積りをしたのですか…?』とお聞きしました。お客様が考えられたプランの為に、必ずこのプランでないといけないのかと思い『プランを変えても良いですか…?』とお伺いしましたら、二つ返事で『構いません』と言われましたので、私なりにプランを変更しました。

変更したところは、北側のおよそ2メートル段差のある敷地に擁壁を造り、安定地盤まで基礎を掘り下げてなるべく北側いっぱいに建物を配置しました。当然の如く、リビング、ダイニング、キッチンは2階に上げ、パントリーや収納スペース、ロフトなどをワンルームで造り、たってのご要望であった『滑り台』も造りました。1階は、子供室が2室、寝室、トイレ、洗面脱衣室、浴室です。

プランを変更しますとお客様から『ダメもとで聞くんですが…』前置きがあり話がありました。2階にベランダを付けるときにサッシを掃き出しにしたい…とどの工務店に依頼しても絶対にできないと断り続けられた…という事でした。私が二つ返事で『出来ますよ』とご返事をすると『ウソっ…』と驚きのご様子でした。

2階に掃き出しサッシを付ける時には、防水上、サッシの下に防水の立上りが必要です。同じ高さの梁の上でしたら水返しの寸法を確保した上にサッシを取付ける為当然掃き出しにはならず、またぐようになります。『掃き出しにする』その答えは実に簡単で、サッシを取付ける所よりベランダ側の梁の高さを下げればよいだけなのです。梁を下げた分だけその下の部屋の天井が低くなる弊害がありますが、そのお客様のお住まいはちょうど寝室でしたので天井が低くても全く問題はありませんとのご返じでした。ベランダのサッシもご要望通り『掃き出し』にしました。

これらの事などを踏まえてみますと、松尾氏が言われている事も間違いはありませんが、そうでない工務店もある事を知っていただきたいと思います。